2016. 8.19.
amazon kindle版の公開開始に伴い、pdf版の公開を中止することといたしました。
どういう話か?
もはや金持ちというレベルの金持ちを越え、社会を超越した権力まで持つことになった一人の女性が、高校時代の同級生の男二人を自分の奴隷にする……。要するにこういう話です。
何を書きたかったか?
ずばり「悪女」です。この作品は実は私にとっては長いこと抱え込んでいて解決できなかった宿題に対する解答のようなものです。
「悪女を書きたい!」こう決意をしたのはたぶん2000年頃、「奴隷の絆」を書き始める前にまで遡ります。
では何故ここまで宿題が放置されたまま残ったのか。理由は読みたい悪女にならなかったからです。世の中のニュースを賑わすこどもを虐待死させた母親とか、あるいは夫を惨殺した妻もまあ悪女には違いないのかも知れませんが、少なくともそんな物語を読みたいとも思わず、書きたいとも思わなかった、つまり自分の書きたい悪女の姿がなかなか掴めなかったということです。
どんなふうに書き進めたか?
こういうわけで従来のようにストーリーラインやブロット作りは手をつけないまま、とにかく思いついたこと、エピソードを全部文章にしてみるという書き方で最初はスタートしました。当然迷走状態ですから、書いた枚数は相当増えるものの、一向に作品としての形は見えないという状況になりました。こんなことを半年近くやって、「ああまだ俺には書けないな……」と諦めかけた時、突然何かのスイッチが入ったんですね。作品中に使ったとあるシーンが誕生した瞬間でした。これがまるでドミノ倒しのように次々と未解決だった問題を解決してくれました。で、一気にブロット、エンディングシーン、ストーリーラインなどが決まり完結にいたりました。因みに、この時点でそれまで書いた原稿の三分の二はボツが決定し、残りも相当部分書き直し、さらに新たにボツにした量の半分ぐらいを書くことになったとだけ申し添えておきます。
どんなスタイルの小説か?
最終的な小説仕様についてですが、私の従来の作品に無かった特徴として次のようなことを取り込みました。
- 一人称を用いているが、これはあくまでも語り部に限り、ヒロインが地の文で語ることはない。つまりヒロインの周囲の人間の視点で物語が進行する。
- ストーリーを補うため、ストーリーラインには登場しない人物もあえて登場させる。なおこの場合は会話文だけでその目的を達成させる。
このような仕様にした理由は、要するに悪女を描くためということに尽きます。「秘められた絆」でヒロイン槙島礼子を悪女として描こうとしてうまくいかなかった反省に立ったものです。槙島礼子本人の一人称を使ったことで、読者の共感を配慮しなければならなくなり、「やむを得ず」という展開を追った結果、悪女というよりは不幸な女という印象になってしまったのです。通常悪人、悪女っぽいキャラは三人称で書くのが一般的なのですが、一人称のように心の動きを細かく描くと不自然に見えるんで面白くないんですよ。一方で悪女の一人称にしてまうと、今度は読み手の理解が追いつかなくなるんですね。なにしろ悪女ですから。結果読む気を失いかねないということになります。その解決策として主役と語り部を分けることにしたわけです。これはまた悪女というものが常に得体の知れない存在として登場するという効果も持たせられるので実に都合がいいと私は判断してます。
ノクターンノベルズ公開を先行させた理由は?
最後に公開方法についてはノクターンノベルズ様への投稿として初めて連載を先行させました。悪女作りに迷走した結果半年近く何も新作が無いではやはりなぁーと考え完結以前ではあったもののとりあえず出来上がっているところをお見せしようじゃないかということにしたからです。この連載を開始した時点というのは、ブロット、ストーリーラインなどが決定した後であることは当然ですが、後半のかなりの部分がまだ書き上がっていないという状況でした。で、書き上がっている部分を連日掲載しながら、欠けている部分の執筆を続けたわけです。正直自サイト用のページ作りなどしていたら、とても残りを書く作業時間の捻出はできなかったと思いますので、その意味でノクターンノベルズ様のユニークかつ大変優れたhtml生成システムには大変助けてもらえました。pdfでの連載もありえたものの、これも結構手間と時間がかかります。それに完結していない状態ではやはりちょっと中途半端なイメージでしたのでそれはやめました。しかし、htmlはやはりpdfの品質には及ばず、プリントアウトしないでチェックする私としては結構冒険ですね、やはり。ノクターンノベルズの親サイト(非18禁)の方ではpdf化も行われているようですが、ノクターンには無いし、何より私自身とここの存在意義にもかかわる問題ですので、ここに改めてpdf版の公開を行うことにした次第です。一種の二重公開になり、これは文芸作品の公開では本来信義上避けるべきことなのですが、ノクターンノベルズ様の規約をチェックしたところ問題がないことを確認しております。(そうであったから投稿連載に踏み切ったわけですが)
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